肉アレルギーは少なく、原因食品別の頻度でも10位以内には入ってきません。
食物アレルギー診療ガイドライン2021
View 39やMast 36などの網羅的なアレルギー検査を実施すると牛肉、豚肉、鶏肉などの項目で陽性になり、除去している方がいらっしゃいますが、基本的にはアレルギー症状を起こしたことがない食品についてはこれまで通り摂取していただいて構いません。(【アレルギー検査】39項目のアレルギー検査は慎重にすべき4つの理由)
ただし、ネコアレルギーの方で肉に対してアレルギーを起こす方がいらっしゃいます。これをPork (豚)- Cat (猫) syndrome (症候群)と言います。豚肉でアレルギーを起こす方が最も多いですが、牛肉でも起こす方がいらっしゃいます。
発症の仕方は、ネコを飼育中に、ネコの毛や皮層、唾液、血液、尿などに含まれる血清アルブミン(Fel d 2)というタンパク質を吸い込むことで、ネコアレルギーを発症し、生物学的に近い種の動物の肉を摂取した際に、アレルギー症状をきたします。身体がネコのタンパク質に対してアレルギーを起こす準備していたところに、似たようなタンパク質が入ってくることで、口腔内の違和感や、蕁麻疹、咳、腹痛、下痢などのアレルギー症状を起こします。肉を食べた後、1時間以内に症状を起こすことが多いです。
ネコアレルギー患者さんの約1~3%に、Pork(豚)-Cat(猫)症候群を併せ持っています。動物飼育を開始してから年単位の時間が経ってから発症すると言われており、注意が必要です。最年少例は6歳で、幼児期から成人期に発症するので、どの年代でも考える必要がありそうです。
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4月27日に小児のアトピー性皮膚炎治療を考える会で座長をしてきます。
アトピー性皮膚炎の治療薬もここ数年でどんどん増えてきており、選択肢が増えてきているのと同時に、どの治療薬を使うべきかまだ正解が出ていない部分もあるのが現状です。
皮膚科の先生方の経験などもお聞きしながら、アトピー性皮膚炎を抱える子ども達に対するより良い治療を考えていきます。
乳児から思春期までアトピー性皮膚炎でお困りの方がいらっしゃいましたら、ぜひ当院へご相談ください。
当院では繰り返し食物経口負荷試験を実施しながら、食物アレルギーがなるべく早く治るように治療を続けています。
(【食物アレルギー検査】食物経口負荷試験ってなに? )
前回に引き続き、卵アレルギーのある女の子です。(患者さんには掲載に同意をいただいています。)
病院の中でもとても元気に過ごしてくれました!順調に解除できてよかったです!
患者さんのご家族からのコメントを掲載します。
「症状が出た時にとても不安だったので先生と一緒に様子を見ながら進めていけたので安心でした。ありがとうございました」
今後とも何かあればいつでもご相談に乗りますので、連絡してください。
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当院では繰り返し食物経口負荷試験を実施しながら、食物アレルギーがなるべく早く治るように治療を続けています。
(【食物アレルギー検査】食物経口負荷試験ってなに? )
前回に引き続き、卵アレルギーのある男の子です。(患者さんには掲載に同意をいただいています。)
早めに来院していただき、順調に卵を摂取する量も増え、無事卒業となりました!
鶏卵アレルギーと診断後、摂取を試さずに2歳、3歳までは鶏卵除去を続けている患者さんのご家族の皆様、その必要はありませんよ。
当院では初診後1ヶ月以内を目安に食べられる量の食物経口負荷試験を実施しています。鶏卵完全除去を続けていることが治りにくくなるリスクだからです。
ぜひ早めに相談してください。
最後に患者さんのご家族からのコメントを掲載します。
「先生、看護師さんがすぐそばで待機してくれるので安心して負荷試験に臨むことができました。ありがとうございました。」
ありがたきお言葉恐縮です。今後とも引き続き、食物アレルギーを抱える子ども達とそのご家族のために尽力していきます。
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皆さんは、母子手帳に挟んである「便色カード」というのはご存知でしょうか?
これはうんちの色から「胆道閉鎖症」という病気を早く見つけるために使用するものです。「胆道閉鎖症」の時は白いうんちになるのが特徴です。
「胆道閉鎖症」とは文字通り「胆道」という部分が「閉鎖」する病気です。胆道は肝臓で作る胆汁という消化液を腸につなぐ通り道で、その部分が閉塞、破壊、または消失するために、胆汁が出せない病気です。(下の図では総胆管などの部分のことを言います。)
「胆道閉鎖症」は生まれてくる子どものうち約1万人に1人がかかる稀な病気です。では、なぜ「胆道閉鎖症」を早期発見することが重要視されているのでしょうか?
それは、「早く見つけて手術しないと肝臓へのダメージが蓄積され、肝移植になる可能性が高まるから」です。
肝臓がダメージを受けるのは、「胆汁うっ滞」が起きているからです。「胆汁うっ滞」とは、胆汁が循環することができずに、たまっている状態を表し、胆汁によって肝臓の細胞はダメージを受け、細胞の働きが低下します。
独立行政法人国立成育医療研究センター
この状態が続くと、「肝硬変」という状態になり、「胆道」が「閉鎖」している状態を解除しても、肝臓の機能が戻らなくなります。結果的に、肝臓の機能を取り戻すためには肝移植が必要になります。
肝移植に至るのを防ぐために重要なこととして、「生後60日以内に手術をして胆道の閉鎖を解除すること」が言われています。 (桝屋隆太, ほか, 胆道閉鎖症葛西手術術後患者における自己肝生存率に対する予後因子の検討, 日本小児外科学会雑誌, vol. 54, 1324-1331, 2018. )
早期発見のための取り組みとして、私も参加しているMCL というグループメンバーで、現在、簡単にスケール付きで記録できるアプリを開発中です。
今後、進捗があり次第お伝えしていきます。
「こどもの健康週間」という取り組みで「食物アレルギーの正しい知識と治療のはなし」のオンライン講演会を茨城県立こども病院の管理栄養士森山と共に実施しました。
現在も視聴することができるので、興味のある方はQRコードもしくは以下のリンクからどうぞ!
食物アレルギーの正しい知識と治療の話
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当院では繰り返し食物経口負荷試験を実施しながら、食物アレルギーがなるべく早く治るように治療を続けています。
(【食物アレルギー検査】食物経口負荷試験ってなに? )
卵アレルギーのある1歳の男の子でした。(患者さんには掲載に同意をいただいています。)
乳幼児喘息があり、体調不良で食物経口負荷試験がなかなか進められない時期もありましたが、無事、卒業できました!
現在は、転居され、お会いできていませんが、元気にされているでしょうか?
また戻ってきたらよろしくお願いします!
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花粉症で外来に来た子のお父さんから「自分も花粉症があるんですが、筋肉注射で良くなりました。」と言われました。よく話を聞くと、「ケナコルト®」というステロイドの筋肉注射薬でした。
前回お話しした「ゾレア®」も注射のお薬ですが、ステロイドの注射薬ではありません。(スギ花粉症に注射薬(ゾレア®)って効くの?)
「ケナコルト®」は長く効くステロイドで、花粉症に対して使用する際には大量のステロイドをスギ花粉飛散時期に投与して数ヶ月効果を持たせようという治療となります。1回の投与で症状を軽くできる方もいるため、手軽に見えます。では「ケナコルト®」はオススメなのでしょうか?
結論から言うと、「効果はあるが重大な副作用があるため、慎重に使うべき」です。
まず、前回にも出した鼻アレルギー診療ガイドライン2020の重症度ごとの治療になります。
アレルギー性鼻炎ガイド 2021年版
この中で、ステロイドの筋肉注射薬はどの重症度でも推奨されていません。
その理由は、「ステロイドの副作用」です。
ステロイドの副作用(日本リウマチ学会)
- 易感染性:免疫力が低下するため感染症にかかりやすくなります。手洗い、うがい、マスク着用、人混みを避けるなど感染症対策をして下さい。ステロイドの内服量が多い時は感染予防の薬を内服することもあります。
- 糖尿病、高脂血症、高血圧:過食をしない、塩分制限などの食事療法を行うことが大切です。場合によっては、糖尿病・高脂血症治療薬や降圧薬を内服することがあります。
- 消化性潰瘍:胃や十二指腸に潰瘍ができやすくなります。胃酸分泌を抑制する薬や胃粘膜を保護する薬を内服します。
- 骨粗鬆症:骨が脆くなりやすいため予防薬(ビスホスホネート薬など)を内服します。
- 満月様顔貌:脂肪の代謝障害により起こります。ステロイドの減量で改善します。
- 精神症状:不眠症やうつ病になることがあります。重症な場合は抗うつ薬を内服します。
- その他:白内障、緑内障、ステロイド筋症、生理不順、痤瘡などがあります。
安易にステロイドの筋肉注射には進まず、上記の重症度に合わせた治療に応じた適切な治療をするようにしてください。
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スギ花粉症の頻度は増加しており、スギ花粉症を発症している子ども達も増えてきています。
松原 篤ほか:鼻アレルギーの全国疫学調査2019(1998年, 2008年との比較): 速報-耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として-, 日耳鼻 2020; 123: 485-490.
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会より2020年版の鼻アレルギー診療ガイドラインが発行され、重症度に応じた治療について発表されました。
アレルギー性鼻炎ガイド 2021年版
今回はこの中の「生物学的製剤(抗体療法)」のお話しです。
2019年に「ゾレア®」という薬が重症なスギ花粉症に使用することができるようになりました。
「ゾレア®」とは抗IgE抗体と呼ばれ、スギ花粉症はスギ花粉(抗原)が入った時にIgE抗体が結合し、マスト細胞とも結合することで、アレルギー反応を起こしますが、IgEがマスト細胞と結合するのを抑えることでアレルギー反応を起こすことを抑えます。
「そもそもアレルギー反応を起こさせなくする」という薬のため、スギ花粉症の方に対しては良い選択肢となります。しかし、高価なお薬なため、どんな患者さんに使えるかが細かく決まっています。次の基準に当てはまるときはスギ花粉のシーズンに投与できる可能性があります。
まず以下の4つを確認します。
次に、スギ花粉飛散時期の最もひどかった時の症状を確認します。具体的には以下の表で1日のくしゃみの回数、1日の鼻をかんだ回数、鼻づまりの程度を確認します。
全ての項目で1点以上、かつ、3点以上の項目が1つでもあれば重症なスギ花粉症と当てはまります。加えて、抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬が使用されていたかも確認しています。
実際に「ゾレア®」を投与するのはスギ花粉飛散時期になります。投与を検討しているシーズンに、まず従来の治療法(抗ヒスタミン薬+ステロイド点鼻薬)を使用して1週間以上治療し、上記の重症なスギ花粉症に当てはまる場合にゾレア®の投与を開始します。
スギ花粉のシーズンは受験シーズンと重なるため、スギ花粉症の治療は学業の面でもとても重要となってきます。スギ花粉症でお困りの方はぜひ検討してみてください。
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卵アレルギーのある患者さんに「インフルエンザワクチン打てないんですか?」とよく外来で相談されます。
今日は「卵アレルギーとワクチンの関係について」お話しします。
今回取り上げるワクチンは次の3つです。
1. 卵アレルギーとインフルエンザワクチンについて
2. 卵アレルギーと麻疹風疹ワクチン(MRワクチン)、おたふくかぜワクチンについて
3. 卵アレルギーとコロナウイルスワクチンについて
1. 卵アレルギーとインフルエンザワクチンについて
インフルエンザワクチンの添付文書を見ると、「鶏卵で培養」して作製されていると書かれています。卵に小さな穴をあけて、インフルエンザウイルスを入れて増やし、感染力を無くして作っています。
この際、卵の成分を完全に除去することはできず、鶏卵タンパク質は数ng/mL以下(1mL中に1gの10億分の1以下)と極めて微量ではありますが、残ってしまいます。その結果、添付文書には「鶏卵に対してアレルギーを呈する恐れのある者」は接種要注意者となります。
しかし、ほとんどの場合、卵アレルギーがあってもインフルエンザワクチンの接種は問題ありません。実際に卵アレルギーがある方と卵アレルギーのない方のインフルエンザワクチン接種後の副反応を比較した研究では副反応の頻度に差はなかったと報告されています1)。
1) Remi Gagnon, et al., JACI, 126, 317-323, 2010.
2. 卵アレルギーと麻しん風しんワクチン(MRワクチン)、おたふくかぜワクチンについて
MRワクチン、おたふくかぜワクチンについてもよく卵アレルギーの方が気にして「卵が使われているのでは?」と質問して頂きます。しかし、ワクチン製造過程で使用しているのはニワトリの胚細胞であるため、アレルギー反応を起こす鶏卵タンパク質は含まれていません。接種の問題はないと話していたインフルエンザワクチンよりも安心して接種ができます。
3. 卵アレルギーとコロナウイルスワクチンについて
食物アレルギー、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎や花粉症、じんま疹、アレルギー体質などがあるといった理由だけで、コロナウイルスワクチンの接種を受けられないわけではないと厚生労働省が明確に答えています。
今までにアナフィラキシーなどの重いアレルギー反応を起こしたことがある方には、摂取直後に調子が悪くなった時に速やかに対応できるように、接種後、通常より長く(30分間)、接種会場で待機していただくこととなっています。
現在、小児(5-11歳)への接種が進められていますが、「努力義務」(接種を受けるように努めなければならない)というわけではありませんので、各家庭で考えながら接種の予約をして頂いていると思います。ここでは、「アレルギーがあることはコロナウイルスワクチンを打たないという理由にはならない」ということだけお答えしておきます。
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アレルギー検査を実施して卵白がクラス2, クラス3と陽性となっていたとき、それだけで完全に除去してしまっている方がたくさんいます。実際にその検査結果で、どれくらい摂取できるのかを答えていきたいと思います。
今回は「イムノキャップ」で測定した結果のプロバビリティカーブをお示しします。「View39」などの多項目を同時に測定できる検査結果は当てはまらないことに注意してください。(39項目のアレルギー検査は慎重にすべき4つの理由)
食物アレルギーの診療の手引き2017
ここで出てくる3種類の卵料理ですが、「全卵1個炒り卵」は言葉通り、全卵1個をしっかり火を通して作った炒り卵です。「加熱全卵1/4つなぎ」は全卵1/4個をパンケーキやハンバーグなどに使用したもので、全卵1個を使用して4つパンケーキやハンバーグなどを作ったうちの1つのことです。「加熱卵黄つなぎ」とは生卵の殻を割ってその殻同士を卵黄を行ったり来たりさせてなるべく卵白を残さないようにした卵黄を使用してパンケーキやハンバーグなどに使用したもので、卵白量では1-2g相当で全卵1/32個相当です。アレルギー症状はタンパク量が多い方が出現しやすくなるため、症状誘発の可能性は「炒り卵1個」>「加熱全卵1/4つなぎ」>「加熱卵黄つなぎ」となります。実際のアレルギー診療ではリスクの低い順に摂取できるかどうかを確認していくため、「加熱卵黄つなぎ」⇨「加熱全卵1/4つなぎ」⇨「炒り卵1個」と進めていきます。(詳しくは当院の小児食物アレルギーのページをご覧ください。)
「イムノキャップ」でクラス2とは0.7-3.5未満、クラス3とは3.5-17.5未満のことを言います。
「クラス2」の方は「加熱卵黄つなぎ」はほとんどの場合摂取でき、「加熱全卵1/4つなぎ」は5-20%程度、「炒り卵1個」は30-60%程度でアレルギー症状が誘発されます。
「クラス3」の方は「加熱卵黄つなぎ」は5-15%程度、「加熱全卵1/4つなぎ」は20-40%程度、「炒り卵1個」は60-80%程度でアレルギー症状が誘発されます。
いかがでしょうか?少なくとも「加熱卵黄つなぎ」程度であれば摂取できる可能性はかなりあります。食物アレルギー診療の原則は「必要最低限の食物除去」と言い、食べられる範囲で食べていることで治るのが早くなります。逆に言えば、採血結果のみでの不適切な除去をすると食物アレルギーが治りにくくなりますので注意が必要です。
採血でよく「卵白」と一緒に測定する「オボムコイド」については以下の記事を参考にしてください。
(オボムコイドのクラス2, クラス3ってどれくらい食べられるの?)
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「オボムコイド」とは卵白の中にあるアレルギーの原因となる主要なタンパク質であり、熱に強いという特徴があります。(アレルギー検査のオボムコイドってなに?)
採血でオボムコイドの値を測定することにより、「卵料理を摂取したときのアレルギー症状が出現する可能性」を予測することができます。
ここでいう「オボムコイド」は1項目ずつ検査するものを選んで測定する「イムノキャップ」や「アラスタット」の値です。「View39」などの多数の項目を一括して測定するような検査の結果は利用できませんのでご注意ください。(39項目のアレルギー検査は慎重にすべき4つの理由)
今回は「イムノキャップ」と「アラスタット」による採血を実施して、「オボムコイド」の「クラス2」、「クラス3」だった方に向けて解説します。クラス分類は0-6までの7段階で、0が一番下、6が一番上です。2以上を陽性と捉えるので、「クラス2」の方は陽性の患者さんの中では一番下、「クラス3」の方は下から2番目ということになります。
以下のプロバビリティカーブを利用します。プロバビリティカーブについての説明は「アレルギー検査のオボムコイドってなに?」を参照してください。
まず、「イムノキャップ」についてです。
イムノキャップ 加熱卵粉末摂取
GroupA 1歳全卵1/2個相当,GroupB 2-6歳全卵1個相当
縦軸:アレルギー症状出現可能性,横軸:オボムコイドの値
Furuya K, Nagao M, Sato Y, et al; investigators IPg. Predictive values of egg-specific IgE by two commonly used assay systems for the diagnosis of egg allergy in young children: a prospective multicenter study. Allergy. 2016; 71: 1435-43
イムノキャップで「オボムコイドクラス2」とは測定値だと0.7-3.5未満のことを言います。上のプロバビリティカーブに照らし合わせると、1歳児で全卵1/2個相当を摂取すると20-40%程度の子どもにアレルギー症状が出現し、2-6歳児で全卵1個相当を摂取すると15-40%程度の子どもにアレルギー症状が出現することになります。
イムノキャップで「オボムコイドクラス3」とは測定値だと3.5-17.5未満のことを言います。上のプロバビリティカーブに照らし合わせると、1歳児で全卵1/2個相当を摂取すると40-70%程度の子どもにアレルギー症状が出現し、2-6歳児で全卵1個相当を摂取すると40-80%程度の子どもにアレルギー症状が出現することになります。
印象はいかがですか?意外多く感じますか?実際のアレルギー診療ではより安全に摂取を進められるように、より少量の食物経口負荷試験を準備しています。(当院小児食物アレルギー特集ホームページ)
次に「アラスタット」ではいかがでしょうか?
アラスタット 加熱卵粉末摂取
GroupA 1歳全卵1/2個相当,GroupB 2-6歳全卵1個相当
縦軸:アレルギー症状出現可能性,横軸:オボムコイドの値
Furuya K, Nagao M, Sato Y, et al; investigators IPg. Predictive values of egg-specific IgE by two commonly used assay systems for the diagnosis of egg allergy in young children: a prospective multicenter study. Allergy. 2016; 71: 1435-43
アラスタットで「オボムコイドクラス2」とは測定値だと0.7-3.5未満のことを言います。上のプロバビリティカーブに照らし合わせると、1歳児で全卵1/2個相当を摂取すると15-25%程度の子どもにアレルギー症状が出現し、2-6歳児で全卵1個相当を摂取すると5-15%程度の子どもにアレルギー症状が出現することになります。
アラスタットで「オボムコイドクラス3」とは測定値だと3.5-17.5未満のことを言います。上のプロバビリティカーブに照らし合わせると、1歳児で全卵1/2個相当を摂取すると25-50%程度の子どもにアレルギー症状が出現し、2-6歳児で全卵1個相当を摂取すると15-55%程度の子どもにアレルギー症状が出現することになります。
「イムノキャップ」と「アラスタット」は同様の傾向を示していますが、実際の値が表す意味は異なっていることに注意が必要です。
採血で「オボムコイド」と一緒に測定する「卵白」については以下の記事を参考にしてください。
(アレルギー検査で卵白クラス2, クラス3ってどれくらい食べられるの?)
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「気管支喘息」とは空気の通り道(気道)に炎症(ボヤ)が続き、さまざまな刺激に気道が敏感になって発作的に気道が狭くなる(大火事)ことを繰り返す病気です。(日本呼吸器学会)
症状としては咳や痰が出て、ゼーゼー、ヒューヒューという音を伴って息苦しくなります(喘息発作と呼びます)。夜間や早朝に出やすいのが特徴です。
日本呼吸器学会
また、「乳幼児喘息」は5歳以下の反復性喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューのエピソードを繰り返す)のうち、明らかな24時間以上続くエピソードが3回以上あり、気管支拡張薬の吸入後に症状の改善が認められる場合のことを言います。(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020)
気管支拡張薬の効果が乏しい場合には「診断的治療」を行います。「診断的治療」とは診断をするために治療を行なってみることを言います。1ヶ月間、ステロイド吸入薬やロイコトリエン受容体拮抗薬の内服などの治療を行い、経過観察することで効果があれば(喘息発作が起きなければ)「乳幼児喘息」と診断します。
「乳幼児喘息」と診断した後は「IgE関連喘息」と「非IgE関連喘息」とに分類します。乳幼児IgE関連喘息の診断に有用な初見として以下の6つが小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2020には挙げられています。
- 両親の少なくともどちらかに医師に診断された喘息がある。(過去にかかっていたものも含む)
- 本人に医師に診断されたアトピー性皮膚炎がある。(過去にかかっていたものも含む)
- 本人が吸入アレルゲン(ダニやハウスダストなど)に対する特異的IgE抗体陽性である。
- 家族や本人のIgEの値が高い。
- 痰の中に好酸球などが存在すると言われたことがある。
- 気道感染がないと思われるときに喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)を起こしたことがある。
なぜ「IgE関連喘息」と「非IgE関連喘息」を分類することが大事なのかは「喘息が学童期以降も継続するかどうかを判断する材料となるから」です。約8割の乳幼児期の喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)は一過性に改善しますが、約2割程度は学童期まで持続します。「IgE関連喘息」の多くは学童期まで継続するため、ステロイド吸入薬やロイコトリエン受容体拮抗薬の内服などによるより慎重なコントロールが必要となります。
乳幼児喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)を3エピソード以上認めている場合には気管支拡張薬などの治療を行い、「乳幼児喘息」と正しく診断し、アレルギー疾患の家族がいるかどうか、採血を実施してダニなどの吸入薬アレルゲン特異的IgE抗体の値を確認し、「IgE関連喘息」なのかどうかを確認し、適切なコントロールをしていくことがポイントとなります。
自分の子どもが喘息なのかな?と思ったら是非参考にしてみてください。
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0歳代の食物アレルギーの第2位は「牛乳アレルギー」です。
食物アレルギー診療の手引き2020
0歳代で牛乳アレルギーとなった場合、アレルギー用ではない、普通ミルクを飲むことができるのかと言う問題が生じます。
牛乳アレルギーがある子ども達全員にアレルギー用ミルクが必要な訳ではありませんが、牛乳タンパクの完全除去が必要な子ども達がミルクを使用する場合には、アレルギー用ミルクを使用することが必要になります。
アレルギー用ミルクには代表的には以下のような3つの分類があります。
食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022
①牛乳アレルギーの原因タンパク質の分子量を小さくすることでアレルギーを起こしにくくした「加水分解乳」
②アミノ酸を混合してミルクの組成に近づけた「アミノ酸乳」
③牛乳タンパク質の代わりに大豆を使用した「大豆乳」
の3つです。
使い方の基本ですが、アレルギー用ミルクが必要であれば①「加水分解乳」をまず使用します。それでもアレルギー症状が出現するようであれば②「アミノ酸乳」を使用します。③「大豆乳」については大豆アレルギーがない方に対する選択肢として提示しています。
ここで注意が必要なのは「ペプチドミルクE赤ちゃん®」(森永乳業)です。アレルギー用ミルクだと思って使用されているご家族と何人もお会いしましたが、「ペプチドミルクE赤ちゃん®」はアレルギー用ミルクではありません。「ペプチドミルクE赤ちゃん®」は”部分”加水分解乳と呼ばれ、牛乳アレルゲンを除去したミルクよりも分子量が大きいペプチドが含まれているため、牛乳アレルギーの子ども達用のミルクとは位置付けられていません(食物アレルギー診療ガイドライン2021)。注意して使用してください。
また、以前はアレルギー用ミルクのいくつかには、「セレン」という体内に必要な微量元素が入っていなかったのですが、各社の商品のアップデートにより、セレンなどの微量元素が加わりました!
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食物アレルギーの原因を調べるためのアレルギー検査と言えば「血液検査」と考えられている方が多いのではないでしょうか。
血液検査とは血液中の「特異的IgE抗体」と言うアレルギーを起こす原因物質の量を測定するもので、ここでは「血中特異的IgE抗体検査」と呼ぶことにします。
また、「皮膚テスト」というものもあり、違いを理解されている方は少ないと思います。今回は、「皮膚テスト」について説明したいと思います。
皮膚のアレルギー検査というと「パッチテスト」という言葉が患者さんのご家族からよく聞かれます。しかし、食物アレルギーの検査で行うのは「プリックテスト」という検査方法です。まず、この2つの違いを説明したいと思います。
簡単に言えば、「プリックテスト」はアレルギーを起こす物質を摂取してからすぐに症状が出る(即時型の)病気のリスクを評価する検査で、「パッチテスト」は金属アレルギーなどのアレルギーを起こす物質と触れてしばらく時間が経ってから(遅延型の)症状が出る病気のリスクを評価する検査です。
一般的に言う「食物アレルギー」では2時間以内に症状が出る「即時型」の食物アレルギーを指しますので、「プリックテスト」を行うことになります。
では、どのように「プリックテスト」を行うのでしょうか?
まず、アレルギーを起こす代表的な原因物質についてはプリックテスト用の液体が市販されています。それを皮膚の上に垂らし、専用の針でその上から刺します。
日本アレルギー学会 皮膚テストの手引き
刺した後は素早くティッシュなどで拭き取ります。
日本アレルギー学会 皮膚テストの手引き
15分から20分後に膨れた部分の大きさ(膨疹径)、赤くなった部分の大きさ(紅斑径)を確認します。
日本アレルギー学会 皮膚テストの手引き
実際の検査では調べたい原因物質の液体の他に必ず膨れるはずの液体と必ず膨れないはずの液体の検査を併せて行うことで、検査がうまくいっているかを確認します。膨疹径3mm以上(海外の報告では2mm以上とする報告もあり)、もしくは必ず膨れるはずの液体を使用した部分の膨疹径の半分以上の反応を陽性と判断しています。
また、プリックテスト用の液体が市販されていない場合でもプリックテストを行うことができます。それが、「プリックトゥプリックテスト(Prick-to-Prick test)」です。
やり方としては、液体を垂らす代わりに直接調べたい原因物質そのものにプリックテストの専用針で刺します。
日本アレルギー学会 皮膚テストの手引き
そして、そのまま患者の皮膚に刺し、15-20分後に判定します。
日本アレルギー学会 皮膚テストの手引き
このやり方で様々な調べたい原因物質でも検査をすることができます。
では、ここまで説明した「皮膚テスト」と「血中特異的IgE抗体検査」の違いを以下に示します。
日本アレルギー学会 皮膚テストの手引き
皮膚テスト最も良い点は迅速性です。血中特異的IgE抗体検査はほとんどの病院で外注検査となり、数日間の結果待ち期間が必要になるのに対し、15-20分で結果が出るため、その場で判断が可能になります。また、もう一つは未知アレルゲンによる検査が可能と言う点です。アレルゲンとはアレルギーの原因物質のことです。先ほど説明したプリックトゥプリックテストを利用することで血中特異的IgE抗体検査で測定できない項目でも評価が可能となります。
逆にデメリットとしては抗ヒスタミン薬を内服していると、検査が膨れるはずの液体でも膨れなくなってしまうことがあります。そのため、72時間前から抗ヒスタミン薬を中止して皮膚テストをします。もし抗ヒスタミン薬を内服して来院した場合には、日を改めるか、血中特異的IgE抗体検査を実施することになります。また、食物アレルギー診療において大事なプロバビリティカーブも皮膚テスト結果では使えません。この点はView39などの検査と同様です。(39項目のアレルギー検査は慎重にすべき4つの理由)
「皮膚検査」と「血液検査」、どちらか、もしくは両方やるかメリット、デメリットを考えながら検査をしていくことが大切です。
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エピペン®というものを聞いたことがありますか?
「エピペン®」とはアナフィラキシーを今までに起こしたことがある方に処方されている薬で、アナフィラキシーがあらわれた時に使用し、医師の治療を受けるまでの間、症状の進行を一時的に緩和するための補助治療剤(アドレナリン自己注射薬)です。
https://www.epipen.jp/about-epipen/photo.html
アナフィラキシーについては前回記事「アナフィラキシーってなに?」をご参考ください。
医師の治療を受けるまでの間、症状の進行を一時的に緩和する薬のため、使用した際は必ず救急車を呼ぶこととされています。
エピペン®を使用すべき症状は以下のようなものです。
https://www.epipen.jp/about-epipen/photo.html
この症状はアレルギー症状の重症度評価のグレード3(重症)の症状と一致します。注意すべき点は、グレード2(中等症)以上の症状が複数臓器で存在している場合にもアナフィラキシーと診断されます(「アナフィラキシーってなに?」)が、エピペン®を打つべき症状には含まれていません。
エピペン®には下記のような副作用が現れることがありますが、生命に危機を与え得るアナフィラキシー症状を一時的に緩和するためには副作用を知った上でも躊躇せずに投与することが重要となってきます。
https://www.epipen.jp/about-epipen/photo.html
実際の使用の仕方については下記の通りです。
ぜんそく予防のために食物アレルギーを正しく知ろう(環境再生保全機構)
実際に処方される際には医療者がきちんと指導いたしますので、ご安心ください。
もし、アナフィラキシーと言われたのにエピペン®を処方されていない方がいらっしゃいましたら、当院にご相談いただくか、下記サイトでエピペン®を処方できる医療機関が検索できますので、参考にしてください。
アナフィラキシーってなあに.jp ( https://allergy72.jp/search/ )
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「アナフィラキシー」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?
最近では、コロナウイルスワクチンの副反応のニュースなどでも出てきていました。
アナフィラキシーといえば、「アレルギーの中で重症なもの」であったり、「時には死に直結する」であったりというイメージがあるかと思います。
そのイメージは合っている部分もありますが、正確ではありません。今回はそのアナフィラキシーについて解説したいと思います。
アナフィラキシーとは「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」とアナフィラキシーガイドラインには書かれています。
難しいので大切なところを赤文字にしました。簡単にいうと「アレルギー反応を起こしうる物質が体内に入ることでアレルギー反応が起き、複数臓器で症状が出現し、生命に危機を与えうる現象」のことです。
実際の診療では、以下の3つのうちのいずれかを満たした場合に「アナフィラキシー」と診断します。
アナフィラキシーガイドライン2014
専門用語も多く出てきてしまい、理解が難しいかと思います。もう一つ、アレルギー症状の重症度評価と合わせてアナフィラキシーを判断する方法があります。以下の表を見てください。
アナフィラキシーガイドライン2014
アレルギーの症状の重症度はグレード1(軽症)、グレード2(中等症)、グレード3(重症)の3段階に分かれます。それぞれの症状をまずどの部分のどのグレードの重症度なのかをそれぞれ判断し、①グレード3(重症)の症状を含む複数臓器の症状がある、もしくは②グレード2(中等症)以上の症状が複数臓器で出現している場合をアナフィラキシーと定義します。
実際の例を3つ挙げます。
呼吸困難と、のどのかゆみがあり受診した患者さんはグレード3(重症)の呼吸器症状とグレード1(軽症)の消化器症状があり、①グレード3(重症)の症状を含む複数臓器の症状があるため「アナフィラキシー」と診断されます。
全身蕁麻疹と複数回の嘔吐があり受診した患者さんはグレード2(中等症)の皮膚・粘膜症状とグレード2(中等症)の消化器症状があることから②グレード2以上の症状が複数臓器で出現しているため、「アナフィラキシー」と診断されます。
しかし、部分的な皮膚の赤み(紅斑) と弱い腹痛があり受診した患者さんはグレード1(軽症)の皮膚症状とグレード1(軽症)の消化器症状であり、「アナフィラキシー」とは診断されません。グレード1(軽症)の症状が複数あるのみではアナフィラキシーとは判断しないことになっています。
アナフィラキシーの診断の仕方が分かってきましたでしょうか?では、なぜアナフィラキシーを正しく診断する必要があるのでしょうか?
その答えの1つはアドレナリン自己注射薬(エピペン®)を所持してもらう必要があるのかを判断するためです。
アナフィラキシーを起こしたことがある患者さんは、繰り返し重症なアレルギー症状を起こす可能性があり、医療機関を受診する前に急速に進行する症状を症状緩和するためにアドレナリン自己注射薬(エピペン®)を保持してもらい、必要時には使用してもらいます。
アドレナリン自己注射薬(エピペン®)については次回説明したいと思います。
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「食物経口負荷試験(以後、負荷試験)」とは、食物アレルギーが疑われている食品を病院やクリニックで摂取してみる検査です。アレルギー症状が出現してもすぐに対応できるように薬などを準備して、医療者の前で摂取します。
「負荷試験は食物アレルギーの最も確実な診断法である。」と食物アレルギー診療ガイドライン2021に書かれています。ここには血液検査だけでは食物アレルギーの確実な診断はできないので、負荷試験をしましょうという意味が内包されています。
実際に、食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017にも「血液検査のみでは食物アレルギーの診断はできない。」と書かれています。
では、「血液検査」と「負荷試験」の関係は?どのように診療に使用しているのでしょうか。ここでも何回か登場している「プロバビリティカーブ」が使用されます。
これまで出てきた「プロバビリティカーブ」との違いはわかりますか?それぞれの曲線が「年齢毎」だったのが、「卵料理名と量」になっています。この「プロバビリティカーブ」は負荷試験でその「卵料理名と量」を摂取したときにアレルギー症状が出現する可能性を描いています。ここでいう「卵の料理名と量」のことを「総負荷量」と呼んでいます。
この「プロバビリティカーブ」に出てくるIgE抗体価もイムノキャップで測定されたもので、View39の値は使用できません。(リンク)
例えば、IgE抗体価が100kUA/Lの場合、「全卵1個炒り卵」では90%以上の患者さんでアレルギー症状が出現し、「加熱全卵1/4つなぎ」では80%程度、「加熱卵黄つなぎ」では半分以下の患者さんでアレルギー症状が出現するということが示されています。
今回、出てきた3種類の「総負荷量」ですが、これは、下記の量に当てはめると、「加熱卵黄つなぎ」が「少量」、「加熱全卵1/4つなぎ」が「中等量」、「全卵1個炒り卵」が「日常摂取量」となっています。
これまでのアレルギー症状出現経過の聞き取りや血液検査の値を参考にどの段階の負荷試験を行うか決定します。
負荷試験で実際に決めた量を摂取して、アレルギー症状が出なければ「陰性」、アレルギー症状が出た場合には「陽性」と判断します。「陽性」であれば負荷試験を実施する前の食生活を継続、「陰性」であれば「総負荷量」を超えない範囲で自宅でも摂取を行えるように栄養指導を行います。
繰り返し負荷試験を行いながら日常摂取量が摂取できるかを確認していきます。ここで注意すべきことは、摂取量を増やすタイミングは負荷試験であって、自宅で増やすことは避けるべきであるということです。
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前回お話ししたView39でも卵アレルゲンとして、卵白、オボムコイドの両方が測定されます。
では、「卵白」、「オボムコイド」というのはどう違うのでしょうか?
卵を摂取して2時間以内にじんましんなどの症状を起こす原因は卵白がほとんどです。オボムコイドとはその卵白の中にある主要なタンパク質となります。オボムコイドの特徴は熱や消化酵素に対して安定であるということです。すなわち、どんなに加熱してもアレルギーを起こす可能性はほとんど変わらないということです。もう一つの主要なタンパク質である「オボアルブミン」は加熱により凝固しやすく、しっかりと加熱することによりアレルギーを起こす可能性は低くなります。
この特徴が「卵白」、「オボムコイド」の両方を測定する理由です。
具体的には「卵白」が陽性となった場合、「オボムコイド」の値を見て、
- 「オボムコイド」の値が高い。⇨しっかり加熱しても卵白でアレルギー症状が出現する可能性が高い。
- 「オボムコイド」の値が低い。⇨しっかり加熱すれば卵白でアレルギー症状が出現する可能性は低い。
と言えます。
ここでいうアレルギー症状が出現する可能性というのは前回の「39項目のアレルギー検査は慎重にすべき4つの理由」でお話ししたように「プロバビリティカーブ」という図に数値を当てはめながら考えます。
前回もお話ししましたが、View39の数値はこの「プロバビリティカーブ」に当てはめることはできません。今回出てきた「オボムコイド」の「プロバビリティカーブ」もイムノキャップやアラスタットという1項目ずつ採血項目を選ぶタイプのアレルギー検査では報告されていますので、診療の参考にしています。
最新版である食物アレルギー診療ガイドライン2021には卵アレルギーの診断はこれまでのアレルギー症状の聞き取りを行い、オボムコイドや卵白特異的IgE抗体価を参考にして「食物経口負荷試験」の判断を行うこととされています。
血液検査だけでは卵アレルギーの診断にはなりません。その辺りを「食物経口負荷試験」の話を含めて次回お話ししたいと思います。
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「水戸市」、「アレルギー」とgoogleで検索すると、「39項目」というワードが他のキーワードとして出てきます。
これは「View39」というアレルギー検査を検索している人が多いのだと思います。
「View39」とは食物アレルギーやアレルギー性鼻炎などを引き起こす代表的な原因抗原39項目を検査するものです。
View39の他にも、MAST 36, MAST48mixなど多抗原を同時に検査できるものもありますが、外来診療中、「View39という検査をやってほしい」と言われたり、「View39を検査してくるように学校から言われた」という方もいたりします。
それだけ「View39万能説」が広まっているのでしょう。
しかし、View39を検査する際は慎重にすべきです。その理由は次の4つです。
① 症状出現に対する心配を増やし、不要な食品の除去を助長する。
もし、普通に卵を摂取できていても、採血して卵白の値が最大まで振り切れていたらどう感じますか?摂取するのが怖くなりませんか?
また、まだ子どもに与えていないピーナッツの値が最大まで振り切れていたらどうしますか?一生食べられないとピーナッツを摂取させるのを諦めてしまいませんか?
1つ目の例では、除去の必要は全くなく、これまで通り摂取を続けてもらう、2つ目の例では少量から開始して症状誘発なく摂取できているようなら少しずつ増やしていくことになります。
View39を行うと、様々な食品で陽性になることがあります。採血結果のみを根拠とした不適切な除去を行うことで、栄養失調になる可能性も否定できません。
② 症状出現の可能性を計算できない。
食物アレルギー診療では「プロバビリティカーブ」という下の図を使用します。
この図の読み方は牛乳アレルギーの子のミルク特異的IgE抗体価の値と年齢がわかれば、牛乳200mlまでの症状誘発の可能性がわかるというものです。この「プロバビリティカーブ」を用いることで、症状誘発の可能性を考えながら診療をしています。
例えばミルク特異的IgE抗体価が3.0kUA/Lの場合、牛乳200mlまで摂取を病院で行った場合、あくまでも確率論ですが、症状を誘発する可能性は1歳未満の児では約90%、1歳児では約50%、2歳以上の児では約30%となります。
ここで出てくる「ミルク特異的IgE抗体価」というのはイムノキャップというView39とは別の1項目ずつ採血する項目を選んで採血した結果出てくる値となります。よって、このプロバビリティカーブというのはView39では使えず、症状誘発の可能性を計算できないということになります。だったら最初からイムノキャップで採血をしておいた方が良いということになります。
③ 項目が実態に即していない部分がある。
View39などの多項目検査で全て陰性であれば、「自分にアレルギーはない」と思うのではないでしょうか?しかし、実態は違います。まず、下の調査結果をご覧ください。
View39に入っていない項目があるのがお分かりでしょうか?
木の実類が入っていません。最近は木の実類の国内摂取量が増えていることもあり、特にクルミやカシューナッツなどのアレルギーが増えています。しかし、View39では検査できていないことになります。View39も全ての項目を網羅しているわけではないということです。
④ オボムコイド以外のアレルゲンコンポーネントが測定できない。
アレルゲンコンポーネントとは食物アレルギーの診断精度を上げるものです。下記のように様々な抗原に対して測定できるコンポーネントが用意されています。
しかし、View39ではオボムコイド以外のアレルゲンコンポーネントの測定ができないため、アレルゲンコンポーネントの測定ができる抗原では、イムノキャップの診断精度がより高くなります。
アレルゲンコンポーネントについてはまた、別の回で解説したいと思います。
以上のことからView39を検査する際には慎重にすべきです。食物アレルギー診療の手引き2020にもView39などは原因不明の食物アレルギー検査の検索などスクリーニング検査と位置付けられ、診断や臨床経過の評価に用いることは推奨できないとされています。
イムノキャップでも13項目までは保険適応内で検査できますので、食物アレルギーやアレルギー性鼻炎などの症状を起こした状況から疑わしい原因抗原を選んで採血することを検討してください。
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