脳神経内科
ドクターインタビュー
主任部長 木村 健介
研究から臨床へ、脳神経内科医としての歩み
私は医学部を卒業後、当時は臨床よりも研究に興味があり、6年間神経の基礎研究に従事しました。その後は大学院で学位を取得しましたが、研究の面白さと同時に、再び臨床医としての道に魅力を感じ始めました。そこで、臨床のブランクを取り戻すために、青森県八戸市の市民病院で救急医としての経験を積むことにしました。最初の1年間は非常に大変でしたが、次第に救急医療の面白さに引き込まれ、救急専門医の資格を取得しました。また同時に、ドクターヘリ・ドクターカーによる病院前診療の経験も数多く積むことができました。
救急専門医の資格を取得した後、元々神経の研究をしていたこともあり、脳神経内科の診療に本腰を入れることを決意し、同じ病院で脳神経内科に移りました。それ以来、脳神経内科を中心に臨床を続けています。
全身の神経に関わる症状に対応
脳神経内科は、脳や脊髄、頭からつながる神経、そのまわりの筋肉の病気を専門とする診療科です。症状としては頭痛やめまい、しゃべりにくさ、物忘れといった意識や言語、認知力に関する障害があります。また、運動機能の障害として、手足のまひや筋力の低下、それによる起立や歩行の困難、痛みやしびれ、感覚の低下などが現れることがあります。
視覚に関する異常も見逃せません。例えば、物が二重に見える、まぶたが下がってきた、視野が急に欠けるなどの症状が現れた場合、それは重症筋無力症や他の神経系の病気の初期症状である可能性があります。日常生活に支障が出るような場合には、早めに診察を受けることをおすすめします。
視覚に関する異常も見逃せません。例えば、物が二重に見える、まぶたが下がってきた、視野が急に欠けるなどの症状が現れた場合、それは重症筋無力症や他の神経系の病気の初期症状である可能性があります。日常生活に支障が出るような場合には、早めに診察を受けることをおすすめします。
当科で扱う具体的な疾患では、脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)、アルツハイマー病などの認知症、てんかん、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、重症筋無力症などの神経免疫疾患に対応しています。特に脳卒中をはじめとする神経救急疾患、神経免疫疾患についてはこれまで数多くの患者さんを診療してきました。
脳神経内科では全身を総合的に診ることができます。そのため他の病気と似た症状がある場合でも、その違いを見極め、必要な検査を行ったり、他の診療科に連携、紹介することができます。これも当科の大きな特徴です。
脳神経内科では全身を総合的に診ることができます。そのため他の病気と似た症状がある場合でも、その違いを見極め、必要な検査を行ったり、他の診療科に連携、紹介することができます。これも当科の大きな特徴です。
脳卒中の早期発見と迅速な対応の重要性
言葉がうまく出てこない、言いたいことが伝えられない、ろれつが回らないといった症状も注意が必要です。これらの症状は、脳卒中やくも膜下出血といった脳疾患の兆候であることが多く、特に突然このような症状が現れた場合には、迅速な対応が求められます。
救急車を呼ぶ判断の際に、特に注意すべきキーワードは「突然の発症」です。例えば、突然急に右側の手足が動かなくなったり、ろれつが回らなくなるといった症状が現れた場合、これらは脳卒中の可能性があります。また、急激な頭痛も要注意です。突然、今まで経験したことのないような激しい頭痛が発生した場合、くも膜下出血のサインである可能性があります。こうした場合には、迷わず救急車を呼び、すぐに病院を受診することが必要です。また、こちらに赴任してきてからドクターヘリ・ドクターカーでの診療にも週一回程度携わっており、脳卒中の急性期診療にいかしていけるような体制づくりをしています。
脳梗塞の原因究明に注力
当科では脳梗塞の治療において、原因までをしっかり追求する診療を行っています。脳梗塞の原因は多くの場合、動脈硬化や不整脈によるものですが、全体の2〜3割程度のケースでは原因が特定できないことがあります。こうした原因不明の脳梗塞の患者さんに対しては、埋め込み型の心電図モニターを使用して長期間の監視を行い、不整脈を検出することが有効です。実際に、モニター解析を行うことで、約3割の患者さんで不整脈が見つかります。見つかった後は、循環器内科と連携し、さらなる検査と不整脈を根本から治療するアプローチに進むことができます。
血栓が流れてくる原因が特定の部位にある場合、その原因となっているものを治療しないと、再び血栓が流れてくるリスクがあります。予防策として血液をサラサラにする薬を使うこともありますが、完全にリスクをゼロにすることはできません。ただし、原因を特定して治療することで、そのリスクをさらに低減することが可能です。
認知症治療は早期発見が鍵
超高齢化が進む昨今、認知症を始めとする脳神経系の病気の診療ニーズは飛躍的に高まっています。日常生活の中で、もしご家族やご自身に「最近物忘れが増えた」「何かしようとしても、思い出せないことが多くなった」と感じることがあれば、それは認知症の初期段階かもしれません。この段階での早期相談が、症状の進行を遅らせたり、適切な対策を講じるための第一歩となります。
認知症が心配な方は、ぜひ脳ドックを受診してください。脳ドックでは、脳の血液が行き渡っていない部分を確認したり、脳が年齢の平均よりも萎縮しているかどうか(脳は加齢とともに自然にいくらか萎縮します)を確認することができます。
認知症が心配な方は、ぜひ脳ドックを受診してください。脳ドックでは、脳の血液が行き渡っていない部分を確認したり、脳が年齢の平均よりも萎縮しているかどうか(脳は加齢とともに自然にいくらか萎縮します)を確認することができます。
最近、認知症に対する新しい治療薬が登場し、「アルツハイマー病の原因に働きかける世界ではじめての治療薬」として話題になっています。ただし、この治療薬が効果を発揮するのは初期の認知症に限られており、症状が進行してしまうと治療の選択肢が限られてしまいます。認知症はできるだけ早い段階で、あるいは症状が現れる前に発見することが非常に重要です。現在、認知症の根本的な治療法はありませんが、進行を遅らせる薬や一時的に意欲や気分を高める薬による対処療法があります。
脳ドックによる、脳の健康チェックとリスク評価
脳ドックは、脳の健康状態をチェックするための検査であり、さまざまな疾患を早期に発見するための有効な手段です。特に、脳動脈瘤や脳腫瘍、脳の萎縮などが見つかることがあります。
では、どのような方が脳ドックを受けるべきなのでしょうか?自覚症状がない方が「念のため」という理由で受けられることが多いですが、特定のリスクを抱える方には特におすすめです。たとえば、家族にくも膜下出血や動脈瘤の病歴がある方は、遺伝的な要因からリスクが高いため、脳ドックを受けることをおすすめします。また、最近物忘れが増えてきた、認知機能が低下していると感じる方も、早期の認知症リスク評価のために受診を考えてみてください。
神経救急と脳血管内治療の強化
今後は、神経救急に特化した診療をより強化していくことが当科の目標です。私自身の救急医療の経験を活かし、神経疾患の中でも重症で集中治療が必要な患者さんを多く受け入れられる体制を整えたいと考えています。具体的には、脳卒中以外の神経疾患における重症患者や救急患者の受け入れを増やし、専門的な治療を提供できる体制をつくっています。
長期的な目標としては、脳血管内治療の分野をさらに拡充することです。これまで学んだ脳血管内治療、例えば脳梗塞に対する血栓除去や、くも膜下出血に対する動脈瘤のコイル塞栓術などを、当院でも積極的に取り入れたいと考えています。昨年から取り組み始め、今年4月には新たに脳血管内治療の専門医も加わりましたので、より多くの患者さんを受け入れ、地域における専門的な治療拠点としての役割を確立したいと思っています。
迅速で正確な診断で、地域医療に貢献
紹介元の先生方に対しては、治療後の予後についてフィードバックを行い、患者さんがどのような結果になったのかをお知らせすることを心がけています。神経疾患は診断が難しいことが多く、誤診の可能性もありますが、迅速で正確な診断と治療を提供し、その結果をしっかりと報告することで、信頼関係を築いていきたいと思っています。
さらに、講演会や学会での発表を通じて、自分自身や当院の取り組みを広く知ってもらい、顔の見える関係を築いていくことも重要だと考えています。茨城県は関東で最も神経内科医が少なく、特に県央や県北地域ではさらに神経内科医は少ないです。当院でも脳神経内科の診療を行っていることを積極的に周知することで、地域医療の発展に貢献できると考えています。
当院の脳神経内科の医師は現状では私一人のため、外来は完全予約制とさせていただいておりますが、救急性や緊急性のある患者さんについては、当日の紹介にも対応しています。平日日中はもちろんのこと、夜間でも緊急の患者さんがいらっしゃった場合には、私にご連絡いただければ対応いたしますので、どうぞ遠慮なくご紹介ください。
当院の脳神経内科の医師は現状では私一人のため、外来は完全予約制とさせていただいておりますが、救急性や緊急性のある患者さんについては、当日の紹介にも対応しています。平日日中はもちろんのこと、夜間でも緊急の患者さんがいらっしゃった場合には、私にご連絡いただければ対応いたしますので、どうぞ遠慮なくご紹介ください。
木村 健介
きむら けんすけ)
職名 | 主任部長 |
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出身大学(卒業年) | 京都大学(平成16年) |
専門領域
急性期脳卒中の診療
脳血管内治療
神経救急診療
神経免疫診療
認定資格等
日本内科学会 総合内科専門医
日本神経学会 神経内科専門医
日本脳神経血管内治療学会専門医
日本救急医学会救急科専門医
日本病院会病院総合医
日本DMAT 統括DMAT隊員