歯科・口腔外科

歯科・口腔外科
ドクターインタビュー

患者さんの満足を第一に、地域の信頼を築く歯科医療
主任部長 武内 保敏

#01 歯科医師としての歩み

私は茨城県笠間市の出身で、高校までを茨城で過ごしました。父の故郷が札幌市で北海道には昔から憧れがあったこともあり、大学は北海道に進学しました。私がなぜ歯科医師になったのかは明確ではありませんが、父は笠間市で陶芸を営んでおり、父の「ものづくり」を見て育った影響で、手に職をつけたいという思いがあったことが一因だと思います。
札幌は自然が豊かで非常に過ごしやすい場所でした。大学生時代は硬式テニス部に所属し、テニスに打ち込んだ日々が懐かしい思い出です。受験勉強の反動で、部活だけでなくスキーや温泉、飲み会など羽を伸ばしすぎでしたね。もっと真剣に勉学に取り組むべきだったと、今振り返ると思います。
北海道大学を卒業し歯科医師の資格を取得した後は、地元の茨城に戻ることを決意しました。茨城県には歯科大学がないため、筑波大学の歯科口腔外科に入局し、大学内と外部の病院で6年間の一貫教育を受けました。
この6年間の研修を経て、平成18年に当院に赴任し、現在に至るまで当院で歯科医師として勤務をしています。
赴任当時は一人体制でしたが、患者さんの増加にともない、現在は常勤医師2名、非常勤医師2名、歯科衛生士4名の体制で診療を行っています。

#02 口腔外科の治療内容と役割

当科では一般治療は基本的に行いませんが、有病者など地域の歯科医院では対応が難しい場合には治療を行っています。抜歯(特に親知らずや埋伏歯)、顎関節症、口腔内腫瘍、顎顔面外傷、嚢胞疾患、インプラント治療、粘膜疾患など、さまざまな疾患に対応しています。特に外傷や炎症などの緊急疾患については、随時オンコール体制で対応しています。
一般歯科では虫歯治療や歯周病治療など、主に日常的な歯の健康維持や予防をメインに診療を行うことが多いと思います。一方で当科のような口腔外科では、歯が原因となる疾患から口腔がんを含め、顎や顔面領域における幅広い疾患に対応しています。

#03 患者さんの負担を軽減する全身麻酔

当科では年間200件前後の全身麻酔手術を行っており、その多くが親知らずの抜歯です。親知らずの抜歯については、抜歯の必要性も含めて患者さんに十分な説明を行い、安心して手術を受けていただけるよう努めています。抜歯は口腔外科の基本手技ですが、まれに偶発症や合併症が発生し、患者さんにストレスを与えることがあります。そのため、ストレスを和らげる技術や対応が求められます。
患者さんには、局所麻酔と全身麻酔の利点と欠点を丁寧に説明し、どちらの方法が良いかを選んでいただいています。親知らずの抜歯は局所麻酔で行うことが可能ですが、全身麻酔では患者さんが眠っている間に手術が終わり、複数本を一度で抜くことで治療機関や通院回数を減らすことができます。特に、抜歯に恐怖を感じる方や嘔吐反射が強い方、一度に多くの歯を抜く必要がある方には、短期入院(1泊2日)の全身麻酔下で手術を行います。
通常、全身麻酔は経鼻挿管で行う施設がほとんどですが、当科では熟練した麻酔科医の協力のもと、「ラリンジアルマスク」を使用しています。このマスクは気管内挿管を必要としないため気道粘膜や咽頭粘膜の刺激が少なく、術後の嗄声や咽頭痛を軽減することができ患者さんのストレスを緩和できるため、より快適な全身麻酔管理を提供できることが特徴です。

#04 他科と連携した周術期の口腔ケア

口腔と全身の健康は密接に関連しています。口腔ケアと誤嚥性肺炎の関連が示されてからますます重要視されています。歯周病をはじめとした口腔内の感染症が心臓病や糖尿病をはじめ、様々な全身疾患を引き起こす可能性があるからです。
当科では他科と連携し周術期トラブルを未然に防ぎ、退院後はかかりつけ医での歯科治療を進めております。当院の医師は非常に強力的で真摯に対応してくださり、治療の連携も円滑に行えるので助かっています。
また看護師も口腔疾患や口腔ケアに非常に熱心で、勉強会や症例検討会を通して口腔の理解を深めています。歯科衛生士の役割も非常に大きく、患者さんに対して往診での口腔ケアやブラッシング指導など口腔衛生管理を行っています。

#05 迅速な痛みの軽減と的確な治療

患者さんの不安やストレスを取り除き、的確な診断と治療方針を提供することが私の理念です。患者さんの訴えをよく聞き、可能な限り早く苦痛を和らげることが最も重要です。歯の痛みは非常に辛いものですから、迅速に痛みを軽減する必要があります。
また患者さんの訴えに耳を傾け、治療法が複数ある場合には患者さんに十分説明を行い、納得していただいたうえで治療方針を決定します。医師が良いと考える治療でも、患者さんが納得しなければよい治療とは言えません。そのため我々は日々学び続け、新しい知見を取り入れ、技術を磨くことが求められます。

#06 患者さんの不安を取り除くための取り組み

歯の健康は非常に大切で、失って初めてそのありがたみを実感することが多いものです。歯を残すための外科治療も行いますが、抜歯依頼で来るため抜歯になることが多く、患者さんに喜ばれることは少ないです。
口腔外科は怖いという印象をお持ちの患者さんが多いのではないでしょうか。口腔外科は一般の歯科と異なり、患者さんにとって何をされるかわからないという恐怖心があると思います。実際に、手術では麻酔針を刺す、メスで切る、歯や骨を削る、病変を取る、糸で縫うといった手技が必要で、患者さんの不安は大きいと思います。
患者さんが少しでも安心して治療を受けられるよう、さまざまな配慮をしています。当たり前のことですが診療器具を患者さんの目に触れないようにする、処置中にメスなど器具の名前を言わない、切るや刺すなどの言葉は使わない、圧迫感を与えないよう力を加えないなどちょっとしたことでも細心の注意を払っています。
またコロナ禍では大変な思いをしましたが、院内感染予防のため医療器具の滅菌の徹底や可能な限りディスポ製品を使用するなど、安心安全に歯科医療を提供できるよう配慮しています。

#07 信頼と連携を重視した患者中心の診療

当科では、水戸市を中心とした地域の歯科医院からの紹介患者を多く受け入れており、月に200件近くの紹介があります。これは大変ありがたいことです。
紹介患者さんに対しては、診療の待ち時間を短縮し、予約が先延ばしにならないよう対応しています。また、必要な処置を迅速に行い、地域の歯科医院に患者さんを逆紹介することで、地域歯科診療支援病院としての役割を果たしています。
地域全体の歯科医療の質を向上させ、患者さんにとってもスムーズで質の高い治療を提供できるよう努めています。
これまで私たちは患者さんを通じて、地域の歯科医師の先生と信頼関係を築いてきました。診療内容に関しては文書でやり取りを行い、開業医の先生方とコミュニケーションを取ることを重視しています。そしてこれからも患者さんに満足していただけるように、十分な医療を提供することで患者さんを介して地域の先生方と信頼関係を築いていきたいと考えています。

#08 地域歯科医療を支えるサポート体制

当院は地域歯科診療支援病院としての役割を担っており、地域の歯科医師の先生方のサポートを行っています。開業医の先生方が日々の診療で処置に困ったり、偶発症が発生したり、外傷や炎症など入院が必要そうな患者さんがいらっしゃれば、当院にいつでも連絡をいただければ対応いたします。
随時オンコール体制を敷いているため、救急科を含め迅速に対応できる体制となっておりますので、積極的にご利用いただきたいと考えています。
治療方針に関しても、私たちは開業医の先生方の治療方針や患者さんの要望に沿った対応を心がけておりますので、気軽に患者さんを紹介していただければありがたいです。

武内 保敏 (たけうち やすとし)
職名 主任部長
出身大学(卒業年) 北海道大学(平成12年)
認定資格等

日本口腔外科学会 認定医
日本口腔科学会 認定医
日本先進インプラント医療学会 専門医