特色
茨城県は県庁所在地に医学部を持たない数少ない県であり、そのため水戸市は県庁所在地でありながら医療過疎が進んでいます。この水戸市および水戸周辺地域、県北地域の医療を守るべく、当科では「この地域の方が消化器の病気で困ることはないように」と想いを一つにして診療にあたっています。そのために救急診療から高度医療の実現、またこれからの茨城の医療を担う若手医師の教育まで、常に改革と挑戦に取り組んでいます。
高齢者治療への姿勢
人生100年時代を迎え、当院で治療をお受けになる患者様も超高齢者の方が増えてまいりました。これまでの経験からやはり80代、90代の患者様の治療は特に高いリスクがあることは事実ですが、当科では年齢で一律の治療制限は設けず、可能な限りの治療を提案するよう心がけています。
診療体制
当科は常勤医8名で治療にあたっていますが、経験年数20年目までの若手~中堅医師を多く有しており、軽いフットワークで重症例についても迅速に対応できることが強みです。緊急対応が必要となる、消化管出血や胆道感染症、消化管異物に対しては24時間、2名以上の医師で対応できる体制を整えており、緊急時でも安全で最善の治療を受けていただける体制となっています。
診療内容
2020年からは内科・外科合同手術である、内視鏡・腹腔鏡合同手術を行っています。合同手術に代表されるように、当科と外科との風通しのよさに自信があり、内科・外科の狭間にある疾患も連携を取りながら必要な時に外科手術のタイミングを逃さぬよう連携しながら診療しています。
また超音波内視鏡下検査・治療に積極的に取り組んでおり、より確実な診断と高いQOLにつながる治療を心がけています。
当科では胃がんや大腸がん、膵がんに代表される消化器がんの診断と治療、消化性潰瘍や逆流性食道炎の診療やヘリコバクターピロリ菌の診断と除菌療法、肝疾患や膵炎の診療、ウイルス性慢性肝炎の抗ウイルス療法などを取り扱っています。
指定難病である炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の治療も積極的に行っており、基本治療から生物学的製剤、免疫抑制剤、白血球・顆粒球除去療法など幅広い選択肢で患者様に合った治療を提供しています。
急性肝炎や慢性肝炎、肝硬変についても他科と連携を図りながら治療に取り組んでおり、重症肝炎の治療はもちろん、血管内治療グループと連携することで肝硬変により食道・胃静脈瘤などの合併症をきたした患者様へも内視鏡下静脈瘤硬化療法やバルーン下逆行性経静脈的塞栓術などを行っています。
内視鏡的治療および経皮的治療として消化管では消化管出血に対する緊急治療へも24時間対応し、食道胃静脈瘤治療、消化管ポリープや早期癌の内視鏡的切除、異物誤飲での内視鏡的消化管異物除去、消化管狭窄に対する内視鏡的拡張やステント留置術、経ロ摂取困難な方への内視鏡的胃瘻造設術などを行っています。
肝胆膵領域では総胆管結石による閉塞性黄疸、急性胆管炎、胆石性膵炎などに対して胆道ドレナージ、内視鏡的乳頭括約筋切開術および採石術、急性胆嚢炎に対して経皮的胆嚢ドレナージ、悪性胆管狭窄に対してステント留置術、肝臓がんに対してラジオ波焼灼術を行っています。
消化器悪性腫瘍については、抗腫瘍治療はもちろんですが、緩和ケア内科と連携し終末期医療まで一貫して治療にあたっています。
消化器疾患でお困りの患者様は、いつでもこ相談ください。その際は、かかりつけの医療機関からのデータや紹介状を持参いただきますとスムーズに診察にあたることができます。
検査治療実績(令和5年度)
上部内視鏡検査 4983件
食道がん・胃ポリープ・胃がんの内視鏡切除術 54件(食道ESD 0件、胃EMR 24件、胃ESD 30件)
下部内視鏡検査 1442件
大腸ポリープ・早期大腸がんの内視鏡切除術 813件(EMR 308件、ESD43件)
内視鏡的逆行性膵胆道造影検査(ERCP) 514件
超音波内視鏡検査 275件(超音波内視鏡下穿刺吸引法EUS-FNA 30件)
超音波内視鏡下瘻孔形成術(Hot AXIOS) 4件
小腸カプセル内視鏡 10件
内視鏡的消化管止血術 133件
異物除去術 12件
腹部超音波検査 4574件(肝生検 26件、ラジオ波治療 24件)
腹部血管造影/動脈塞栓術(TACE) 9件
C型慢性肝炎 インターフェロンフリー抗ウイルス剤(DAA)治療
ハーボニー 4名、マヴィレット 3名、 エプクルーサ 4名
B型慢性肝炎 核酸アナログ治療
バラクルード 19名、テノゼット 4名、ゼフィックス 1名、ベムリディ 36名
炎症性腸疾患の抗体治療など
レミケード 33名、ヒュミラ 22名、シンポニー 18名、エンタイビオ 15名、ステラーラ 33名、ゼルヤンツ 10名(潰瘍性大腸炎 226名、クローン病 55名)
診療科からのメッセージ
現在は様々な消化器疾患に治療ガイドラインが整備され、基本的にこれに従って診療を行っています。しかし、患者様個々には、ガイドラインでは十分な治療が困難であったり、ガイドラインには記載されないような場合もあります。患者様個々の状況にあわせ、最善の治療結果が得られるように努力しています。
メンバー全員で、新しい技術も取り入れながら力を合わせ、地域の皆様のお役に立ちたいと思っています。